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【友達と飲みに行くだけなのに…散々すぎた1日の話】

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期待に胸を膨らませていたあの朝

小学校からの同級生たちと、久しぶりに集まることになった。みんな大人になって、家庭や仕事で忙しい中での再会。そりゃあもう、めちゃくちゃ楽しみにしていた。

この集まりが決まったのは、確か1ヶ月くらい前だっただろうか。誰かがグループLINEで「そろそろみんなで集まりたいね」と言い出したのがきっかけで、あれよあれよという間に日程が確定した。平日の夜、17時スタート。少し早めの時間設定だったのは、みんな翌日も仕事があるからだ。

昔はよく集まっていたんだけど、ここ数年はコロナもあったし、それぞれが家庭を持ったり、転職したり、地元を離れたりで、なかなか全員が揃うことがなかった。だからこそ、今回の集まりは特別だった。

俺自身も、この日のために仕事のシフトを調整して、完全オフの日として確保していた。嫁にも「今日は小学校の同級生と飲み会だから」と伝えて、了承を得ていた。家族持ちになると、こういう調整も必要になってくるんだよね。

早めに出て、気持ちを高めようと思ってた

飲み会は17時から。でも俺は休みだったから、少し早めに家を出て、ひとりでぶらぶらしながら気持ちを作っていこうかな、なんて思ってた。嫁にも「ちょっと早めに出るわ〜」と伝えて、12時頃に家を出発する予定だった。

昼過ぎに家を出て、駅前のカフェでコーヒーでも飲んで、本屋をぶらついて、時間になったら待ち合わせ場所へ。そんな余裕のあるプランを頭の中で描いていた。久々の休みだし、こういう時間の使い方も悪くないだろうと。

待ち合わせ場所は、駅から徒歩5分ほどのところにある、ちょっとおしゃれな店だった。俺がリクエストした「チーズと肉が食べられる店」で、インスタ映えするような料理も出てくるらしい。グループLINEでみんなに提案したら、「いいね!」と即座に賛同を得た。

正直、こういう店を選ぶセンスがあるのは俺くらいだと自負していた。他のやつらはいつも居酒屋チェーンばかり提案してくるから。今回は俺が主導権を握って、ちょっといい感じの店をセレクトしてやったのだ。

……のはずだったんだけど。

運命の分岐点は、朝のLINE通知から始まった

朝からなんか、会社のLINEがざわついてる。店長が今日はワンオペ気味で大変そうな雰囲気。役職者のグループLINEが”ブルブルブルブルッ”と震えっぱなし。

最初は無視しようと思った。だって今日は休みだもの。でも管理職という立場上、完全に無視するのも気が引ける。ちらちらとメッセージを読んでいると、どうやら急な欠勤者が出て、人手が足りなくなっているらしい。

店長からの「なんとか回してます💦」というメッセージが目に入る。絵文字に滲む疲労感。他の役職者たちも「今日は出勤できない」「申し訳ない」といったメッセージを送っている。

「大丈夫かな…」と思いつつ、昼前には気になって返信した。

『大丈夫ですか?今日は休みですが、何かできることあれば』

これが運命の分岐点だった。今思えば、このメッセージを送らなければよかった。送らなければ、俺は平和に昼過ぎに家を出て、カフェでコーヒーを飲んで、本屋で時間を潰して、余裕を持って待ち合わせ場所に向かえたはずだ。

でもまあ、送ってしまったものは仕方ない。

断れない空気が、じわじわと俺を追い詰めていく

そこから会話が展開していき、最終的には「出勤できる?」の流れに。

いやいや、今日だけは完全オフの予定だったのに……。でも管理職あるあるというか、最低人数で回してる手前、”行けません”と言えない空気は確かにある。

店長からは「本当に申し訳ないんですが…」と前置きされつつ、「もし可能であれば、午後から数時間だけでも…」というメッセージが届いた。他の役職者たちも「俺も出られたら出てたんだけど…」「助かります」といった空気を醸し出している。

ああ、これはもう、断れないやつだ。

心の中で葛藤する。今日は久々の同窓会なんだ。小学校からの仲間との、貴重な時間なんだ。でも、店が回らなくて困っている仲間もいる。どちらも大事な「仲間」だ。

結局、俺は折衷案を提示することにした。

『17時には絶対に上がらせてもらいますが、それでよければ出ます』

店長からは即座に「ありがとうございます!助かります!」という返信が来た。これで決まってしまった。

嫁への報告と、微妙な空気

家を出る前に、嫁に報告した。

「あのさ、会社から連絡来て、ちょっと午後から出勤することになった」

嫁は洗濯物を干しながら、少しだけ顔を曇らせた。

「え、今日休みじゃなかったの?飲み会あるんでしょ?」

「うん、だから17時には絶対上がるって約束したから。ギリギリ間に合うと思う」

「…そう。まあ、仕方ないよね」

言葉では「仕方ない」と言ってくれたけど、その表情には少しだけ不満が滲んでいた。せっかくの休みなのに、結局仕事に呼ばれて。家族の時間も削られて。でも文句は言わない。そういう嫁の優しさが、逆に申し訳なく感じた。

結局、飲み会前に仕事へ。「半日だけで帰ります!」とだけ伝えて、なんとか希望をつないだ。

仕事は予想以上にバタバタだった

午後から出勤すると、店内は予想以上に混んでいた。週末前の平日ということもあって、お客さんの入りが良かったのだ。店長は既に疲れた表情で、「本当に助かります」と俺を迎えてくれた。

「17時には絶対上がるから、それまで全力で働くわ」

そう宣言して、俺はフルスロットルで動き始めた。次から次へとタスクが降ってくる。時計を見る余裕もないくらい、忙しかった。

それでも、頭の片隅には常に「17時」という数字があった。17時には上がる。17時には同級生たちと合流する。17時には楽しい時間が始まる。そう信じて、必死に働いた。

でも、仕事。色々あって想定より押してしまい、気づけば17時半。

時計を見た瞬間、心臓が止まりそうになった。

「え、もう17時半!?」

店長に「すみません、もう上がります!」と告げて、急いで制服を脱いだ。店長は申し訳なさそうに「本当にありがとうございました」と頭を下げてくれた。

飲み会開始時間、過ぎてるやん。

追い打ちをかける電車トラブル

急いで電車に飛び乗ると、今度は電車が急停止。なにかと思ったら「車内で体調不良の方が…」とのアナウンス。

いや、それは仕方ない。仕方ないんだけどさ。今日じゃない日でもよかったんじゃないか…と思わず空を見上げてしまった。

電車は完全に停止し、車内には微妙な空気が流れた。みんなイライラしているわけではないけど、でも誰もが「早く動いてくれ」と思っている。俺もその一人だった。

スマホを取り出して、グループLINEを確認する。同級生たちは既に集まっていて、楽しそうな写真が何枚かアップされていた。ビールで乾杯している写真、料理が運ばれてきた写真。

ああ、もう始まってるんだな。俺だけいない。

『ごめん、電車止まってて遅れる!』

とりあえずメッセージを送った。返信は「大丈夫〜!」「気をつけてな!」といった優しい言葉ばかりだったけど、俺の心は焦りでいっぱいだった。

電車が動き出したのは、それから10分後。たった10分だけど、この10分がものすごく長く感じた。

夢のチーズと肉は、幻となった

結局、待ち合わせにも間に合わず、俺がリクエストした「チーズと肉が食べられる店」はラストオーダー終了。悲しすぎる。

駅に着いて、待ち合わせ場所の店に向かうと、同級生の一人が外で待っていてくれた。

「おう!遅かったな!」

「ごめん、色々あって…」

「まあまあ、とりあえず入ろうぜ。あ、でもラストオーダー終わっちゃったから、お前の分は注文できなかったわ」

ガーン。

俺がリクエストした店。俺が選んだ店。俺が食べたかったチーズと肉。全部、幻となった。

店内に入ると、同級生たちが「おー!来た来た!」と歓迎してくれた。みんな既にいい感じに酔っていて、楽しそうだった。テーブルには美味しそうな料理の残骸が並んでいる。ああ、これが俺の食べたかったやつか…。

「お前、飯食ってないだろ?どこか行ってきたら?」

気を遣ってくれた同級生がそう言ってくれた。確かに、昼から働きっぱなしで、腹はペコペコだった。

牛丼屋で味わった虚無感

しかも、飯をどこかで食べてから合流しようと思ったのに、18時台でどこも満席。やっと見つけたのが、目の前にあった牛丼屋。

――ひとりで牛丼をすする。

いや、何やってんだ俺。

「久々の飲み会」「おしゃれな店」「みんな集合」そんな予定だったのに、最初の飯が牛丼て。

カウンター席に座って、並盛りの牛丼を注文した。店内には俺以外にも何人か客がいて、みんな黙々と牛丼を食べている。誰も話していない。静かな店内に、咀嚼音だけが響く。

運ばれてきた牛丼を見つめながら、俺は深いため息をついた。

この牛丼が悪いわけじゃない。むしろ美味しい。でも、今日食べる予定だったのは、こんな牛丼じゃなかった。おしゃれな店で、同級生たちと一緒に、チーズたっぷりの料理を食べて、肉を頬張って、笑いながら昔話に花を咲かせる。そんな時間を過ごすはずだったのに。

しばらく虚無を味わったあと、ようやく合流してシーシャ吸いながら楽しく飲めたから、そこは良かったんだけどね。

それでも、最後は楽しめた

牛丼を10分で完食して、店に戻った。同級生たちは二次会の場所を探していた。

「シーシャの店、どう?」

誰かが提案すると、みんな「いいね!」と賛成した。俺も久々にシーシャを吸いたかったから、異論はなかった。

二次会のシーシャバーは、落ち着いた雰囲気のいい店だった。ソファに座って、シーシャを吸いながら、ようやく同級生たちとゆっくり話すことができた。

「お前、仕事大変そうだな」

「まあね、管理職になってから、休みの日でも連絡来るようになっちゃって」

「わかるわ〜、俺もそうだもん」

みんな、それぞれに大変なことを抱えながら生きている。家庭のこと、仕事のこと、健康のこと。昔は無邦気に遊んでいた俺たちも、今ではすっかり大人になった。

でも、こうして集まって話すと、不思議とあの頃に戻れる気がする。小学校の頃の、何も考えずに笑っていたあの頃に。

翌朝も早かったから俺はそこで解散。でも帰り道で思ったよ。

「今日、ついてなさすぎだろ俺」

帰り道で感じたこと

終電ギリギリの電車に乗って、家路についた。車内は酔っ払いや疲れた会社員でいっぱいだった。俺もその一人だ。

スマホを取り出して、今日一日を振り返る。

朝、会社からのLINEで始まった運命の分岐点。断れない空気の中での出勤。押してしまった仕事。止まった電車。食べられなかったチーズと肉。ひとりで食べた牛丼。

どれもこれも、「ついてない」出来事ばかり。でも、最後のシーシャバーでの時間は、本当に楽しかった。同級生たちと笑い合えた時間は、何物にも代えがたい。

ある意味、忘れられない1日でした。

家に着くと、嫁はもう寝ていた。静かにドアを開けて、そっと部屋に入る。

「おかえり」

暗闇の中から、嫁の声が聞こえた。

「ただいま。楽しかったよ」

「良かったね。おやすみ」

「おやすみ」

布団に入って、目を閉じる。明日もまた、仕事だ。でも今日の経験は、きっと笑い話になる。いつか同級生たちと再び集まった時に、「あの時はマジでついてなかったよな」と笑える日が来るだろう。

そう思いながら、俺は眠りについた。


教訓:休みの日は、スマホの電源を切るべきだった。

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